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母の悪口 [介護日記]

 1年3ヶ月前に比べれば、母のうつ病はかなりよくなってきて、目がすわった感じではなくなってきたし、顔の表情も柔和になってきた。
本当は精神科か心療内科で診てもらうことが必要なのだろうが、もう1年近く、その手の病院には行ってないのに、症状が悪化してないのは、内科の先生が出しくれているパキシルという薬が効いているからかもしれない。

一昨年の秋、母が腰の圧迫骨折とうつ病で入院したときには、私はいい娘、やさしい娘をやりすぎてしまって心身ともに大変だったせいか、暮から正月にかけて1週間もダウンしてしまい、起きられない状態だった。
その教訓から、私はいい娘になるのはやめようと思った。身がもたないし、母のいうことを何でも聞いていたら、ストレスが大きくなるのも目に見えていたからだ。

そう決心していたはずなのに、このお正月、ヘルパーさんは来ないし、お嫁さんも食事の世話をしてくれなくて、飢え死にしそう(そんなことあるはずもないのだが、2日にお嫁さんの実家に弟一家が出かけてしまうので、不安になったのだろう)だという母の言葉を受けて、2日に母の所に行かざるを得なくなった。
毎週木曜日に母の所に通っているので、私の予定では、新年は5日を初日にしたいと思っていた。というのも、3日の朝から私は仕事で、5日もまた母のところに行くとなると、正月なのに少しも休めなかったという気分になってしまうのを避けたいと思ったからだ。

2日はそんな不本意な行きかただったから、いつもに比べて、私ははるかに機嫌が悪く、そこで母の悪口を書いてみたくなった。


一つ 弟一家と一緒に暮らしているのに、しかもお正月でみんないるはずなのに、私が行かなければ飢え死にしてしまうと思うのはどうしてなのか。

二つ 歯が悪いことはわかっているから、献立だって苦労して考えるのに、何を提案してもいやな顔をするのどうにかならないか。それでいて、私の作るものはペロリと平らげるくせに、「無理して食べている」とか、「義務感で食べている」などと殊更にいうのか(食欲がないと思っているのは、自分だけで、傍から見れば十分食べているのだ)。

三つ 食事を作れば生ゴミが出るのは当たり前、掃除をすればホコリが出るのは当たり前なのに、なぜ私を非難するのか(2日は、夫も一緒に行ってくれたので、車で自宅に生ゴミを持ち帰る羽目になった)。

四つ シーツ類やタオル、パジャマ、普段着などの洗濯をお嫁さんに頼まないで(頼みにくいのだが)、なぜ私がリュックサックに入れて持ち帰らなければならないのか。

五つ 母の冷蔵庫を、1週間分の昼食の食材で満たすために、自宅で調理っしたものを冷凍にしたり、生活クラブ生協の冷凍食品を買い揃えて持って行ったりして、それなりの努力をしているのに、量が多すぎる、少なすぎると、いつも文句をいうのか。

六つ 布団を干すために朝早くから、1時間15分もかけて出かけているのに、干せば干したで寝られないといい、別の布団を敷くといえばホコリっぽいからいやだといい、干さなければ干さないで湿っぽいのはイヤだと、いう。

七つ 私が行かない日はほとんどベッドで寝ているというけれど、私が行ったときは、2~3時間は起きていられるのに、痛い、痛いと言って、何もしないのはどうしてなのか。

八つ 母を病院に連れて行くのも、薬をもらいに行くのも、なぜ同居している家族ではなくて、遠くから行く私の役目になってしまっているのか。

同居している弟に言わせると、母はいつもぐちゃぐちゃとどうにもならないことばかり考えたり、言ったりするからいやだと言う。確かに、弟の言うとおりだ。だから、お嫁さんが母のことをお荷物に感じてしまうのも無理もないかもしれない。もっとやってほしいと内心思ってしまうのは、娘としての私の気持ちからなのだろう。

そのうえ、実の娘である私が、ブログに母の悪口をこんなに書いていると知ったら、母はどう思うだろう。悲しいと思うより、今以上に自分のことを嫌いになるだろう。
でも、私は、今のこういう母でも、母のことを決して嫌いになったりしない。確かに2日は行きたくなかったけど、正月に介護する母がいなくなってしまったら、その方がどんなに悲しいかわからないから……。

今日、私が母の悪口を書いたのは、必ず老いの日を迎える私自身のためだ。
今はまだ、母の体の痛みも、心の痛みも、思考回路も理解できないところがいっぱいあるけれど、20年経ったら、きっと母の気持ちを理解できるようになるに違いない。そして、「あのとき、どうしてもっと母の気持ちをわかってあげられなかったのだろう」と後悔することになるだろう。

悪口ばかり書いてしまったが、暮にはうれしいことが二つあった。一つは、母から「この1年、本当にありがとう」と言われて、お小遣いをもらったことだった。うつ病になってからの母は、以前とは全く違ってケチになってしまっていたから、小遣いをもらえるなどとは思ってもみないことだった。お金をもらったことはもちろんうれしかったが、母が感謝の言葉を口にし、それを形にまでして表わしてくれたことのほうがもっとうれしかった。そこに、うつ病になる前の母の姿を見たからだ。

二つ目は、正月用に私が花屋で買って来た色とりどりのミニカーネーションを見て、「かわいい」と言ったことだった。病気になる前の母は、仏壇に花を絶やさない人だったのに、ここ1年以上、花の香りがいやだと言って、花を飾るのもやめていたから、私はそれがさみしくて仕方がなかった。
だから、久し振りに見た明るく、華やかな花の色に見入って、私はすっかりうれしくなってしまったのだが、それを少しだけ母と共有できたことで、気持ちまで明るくなった。

付けたし
何やかんやと書きながら、結局、私は知らず知らずにたまっていたストレスを、ブログに書いて発散したかっただけなのかもしれない。書いたらかなりすっきりしたから。読んでくださっている方、ごめんなさい。 

最後に母へ
ごめんね。お母さん、いろいろ書いてしまって。悪口には違いないんだけど、私的には、やはり悪口ではないのよね。体は不自由でも、心まで不自由にならなければよかったのにね。一番つらいのは、やはりお母さんだってこと、わかっているからね。


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コメント 5

びあんこ

ちいととさん、こんにちは。
はじめまして、でしょうか。いつもブログ拝読してますので、そんな気がしないのですが。

お母さんのこと「悪口」ではないと思いますよ。お母さんの「実態」ですよね。
ウチの母はおかずは「なんでもいいよ」、たまに布団干すと「ありがとう」と言ってくれるし本当に扱いやすいんだなー、もっと有難く思わなければ、と実感したことでした。

洗濯のことは、母が妹宅にいたころ、やはり頼みにくかったのか、大がこびりついたシーツに寝ていたのが悲しかった覚えがあります。今は私が(自分がくさいのがイヤなので)回収して洗っていますが。
お母さんの洗濯もの用のかごを用意してそこに入れられたものを洗うというふうにしたら頼んだり頼まれたり、の必要がなくなるのでは、と思ったりしました。

老いは私にも忍び寄っているわけですが、なるようにしかならないのかな、と。
若い人が次々死んでいくのを見てきましたし、いつ、どうなってもいいように覚悟だけはしています。

本年も、どうぞよろしく。
by びあんこ (2006-01-04 12:01) 

ちいとと

ぴあんこさん、あけましておめでとうございます。
私もちょくちょくぴあんこさんのところにはお邪魔しています。
母の悪口を悪口ととらないで、わかっていただいたこと、とてもうれしく思いました。
私がお正月に母の世話をしたのは今回が初めてですが、母は30年近くもお正月に私の家族を受け入れて、幾晩も泊めて面倒をみてくれたんです。ですから、これくらいのことで文句を言うのは大間違いなんです。本当のところ。

洗濯物の件ですが、これに限らず、お嫁さんは、母に対しては、ほとんど見て見ぬ振りをしているのだと思います。下着については洗ってくれているのですが、大きなものは面倒だということなのでしょう。
私がイヤ(いやというほどでもないのですが)だといえば、彼女は家で洗えるシーツやセーター類などもクリーニングに出すのです。それは母にとっては不本意なことなんです。
いつも、私が母と一緒に夕飯を食べてから自宅に帰るのも、弟夫婦には理解できないようです。用事だけすませて早く帰ればいいのに、ムダなことと思っているようです。
考え方の違いだと思います。

これからは、過去のことも将来のこともあまり気にしないで、今、このときを心ゆたかに過ごせたらと思っています。

親の介護、お互いに淡々とやっていきましょうね。自分たちの生活もそれなりに楽しみながら。
by ちいとと (2006-01-04 21:38) 

tulip

はじめまして!トラックバックを受けまして、ちょっとこちらにおじゃましました。
自分のブログに義理姉達の悪口…いや!“実態”を書き連ねてしましました、実母の介護をしている彼女達の…!。嫁である私は遠く離れていてほぼノータッチ。色々と事情があるのですが、60歳前後の彼女らの連日連夜の奮闘ぶりには本当に頭が下がる思いです。
育児のストレスをブログで爆発させています。ちいとと様みたいな方にとっては本当に失礼なヤツです。ごめんなさい。
けれど書いちゃうとスッキリして次に進むパワーが湧いてくるんですよね。
by tulip (2006-01-04 22:21) 

椋木萌

ちいととさん、はじめまして。
お母さんのお世話、たいへんですね。
うちの母も鬱病です。
ついでに言うと、わたし自身も鬱病です。
自分が鬱病になって、ようやく母の苦しみがわかりました。
お母さんはちいととさんを頼りにしていて、甘えているんですね。
グチをこぼしたくなる気持ち、わかります。
わたしもブログに書くことによって、気持ちの整理をしています。
お互いにがんばりましょうね。
by 椋木萌 (2006-01-05 11:14) 

ちいとと

tulipさん、ご主人の実家で大変だったでしょうね。実の母親とはいえ、お姉さんたちもお母さんの介護で、かなりストレスがたまっているのだと思います。けれど、子育て奮戦中のtulipさんにしてみれば、それどころではないですよね。入園式に来られるというのもお姉さんたちのストレス発散なのかもしれませんが、迷惑な話ですよね。ゆうつになる気持ち、よくわかります。

椋木萌さん、コメントありがとうございます。
今、少し前に母の所から帰ってきたとこなんですが、「この頃、私、あなたにスイマセンとよく言うけど、すいませんは謝るときに使う言葉なのよね。これからはありがとうと言うわ」って言ったんです。ここのところ、母から深いお辞儀をされて、スイマセンと言われることがイヤになっていたので、母の言葉に少なからず感動してしまいました。
母の気持ちに出来るだけ寄り添おうと思いながら、感情が優先してしまって心が穏やかでいられないことがあります。

ところで、私はうつ病は、心あるいい人がなる病気なのではないかと思っています。
これから、椋木さんにいろいろ教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
by ちいとと (2006-01-05 22:09) 

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