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母をめぐる弟との葛藤 [介護日記]

「母の自分史」にも書いたが、上の弟(母にとっては長男)が50歳を過ぎて20歳も若い女性と結婚して、お嫁さんに引きずられるような形で家を出たとき、母は弟の新たな門出を素直に喜んだ。ところが、その後、弟がお嫁さんの実家のすぐ近くに新築のマンションを購入し、一人暮らしだったお嫁さんの母親がそのマンションに足繁く通っていることがわかると、母はひどく傷ついた。

出て行った上の弟に対して、「年老いたお母さんを一人にするのはかわいそうだから」と、一家で母の家に住むことを決心してくれたのは下の弟だった。勤め先に近かった自宅マンションを処分し、通勤が不便になるのも厭わずに母との同居を申し出た弟に対して、母はもちろんだったが、私も当時はどれほど感謝したかわからなかった。
私は上の弟と仲がよかったのだが、この時ばかりは下の弟のほうを好ましく思った。

けれど、私の感謝の気持ちはこの2年間で急速にしぼんでしまった。
母が元気で、自分のことを自分でやれているうちは何の問題もなかったのだが、母がうつ病になったり、腰椎の圧迫骨折をして、多少の介護が必要になると、弟夫婦に「自分たちは貧乏くじを引いた」という態度がありありと見て取れるようになったからだ。

私はひどいと思った。下の弟は、子どもたちが生まれたときから始まって、実家に移り住むに当たっても、有形無形でどれだけのことを母にしてもらったかわからないからだ。。やってもらったことはすっかり忘れてしまって、自分たちは「大変な思いをして、ここに住んでやっている」ということだけで頭がいっぱいになっているように思えてならなかった。

1週間前、母は腰の圧迫骨折に加えて、背中まで同じ状態になって入院寸前まで追い込まれた。民間のストレッチャー付きの車を頼んで病院に行くほど痛みがひどかったのだが、結局治療の方法がないということで入院は出来なかった。母の病院に付き合った私は、母のつらそうな様子が気になって、「母をいたわってあげてほしい」と弟に電話をかけた。

ところが、弟は「そんなこと言ったって、雨戸は自分で開けているんだよ。本当に痛いならっそれも出来ないということだろう」と言う。そして、「基本的に、自分たち夫婦は望まれたことだけをやるようにしているから」と付け加えた。
母が自分の家なのに小さくなって、弟たちに頼みたくても頼めない状況に陥っていることなど、想像もできないらしい。

その後、余計な口出しをした私に腹を立てて、弟も弟のお嫁さんも母につらく当たったことを、母から聞かされた。
私は後悔した。いくら母のことが心配だからといって、それを弟に伝えてはいけなかったのだと思った。

「83歳でこんな体になって、迷惑ばかりかけて、きっとあの子たちは(弟夫婦のこと)、私のことお荷物だと思っているのよ」と、母は私に言う。
弟夫婦から見たら、母はマイナス言葉しか言わないし、気の思い存在なのかもしれない。
けれど、母はうつ病だってこのところ随分よくなっているし、体重だって以前に比べて4キロも増えたし、お嫁さんには夕飯を作ってもらっているだけで、あとはヘルパーさんや私の手を借りながらも、とりあえず自分のことは自分でやっているわけだし、頭だってしっかりしているし、83歳にしては立派なもので、自分を否定することなんて全然ないと、私は思っている。

本当のところ、私はお嫁さんに対してはそれほどの悪感情はもっていない。お嫁さんとはそんなものだろうな、と思っているからだ。実の娘の私と、お嫁さんとでは母に対する気持ちが違うのは当然だろう。
けれど、弟は息子ではないか。

今現在の母をそのまま受け入れて、母の体の痛みや、老いの悲しさや不安な気持ちに、寄り添うことは出来ないのかと思う。
自分もやがて年老いていくということが、想像できないのだろうか。
「お母さん、大丈夫?」といういたわりの一言でもかけてくれれば、母の気持ちが救われるのにと思う。

上の弟は、毎月、母に相当額の生活費を当然のこととして振り込んでくれて、折にふれて、「お母さんのことはいつも気にしているんだけど、お姉さん(私)にばかり任せてしまって、ごめんね」と言ってくれる。そして、私がいる日に母の顔をお嫁さんと一緒に見に来る弟は、いつも母の手を握ってから帰る。すると、母は何も言わずに涙ぐむ。
下の弟は、家を出て行った上の弟が母の生活費の面倒を見るのは当然だと思っている。
私はそうは思わない。

そんな訳で、下の弟との葛藤はあっても、上の弟と私は気持ちが通じていると思っている。下の弟とは通じ合わないどころか、溝が深まっていくばかりで、今は顔も合わせたくないと思うくらいだ。

けれど、下の弟夫婦がいてくれるから、私は母の所に週に一日通うだけですんでいるわけだし、弟夫婦に対して「ありがとう」の気持ちを忘れてはいけないのだと、強く自分に言い聞かせなければいけないのだろう。

そうでないと、母を苦しめることにもなってしまうから。


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